要点:放射冷却とは?
放射冷却とは、物体が熱を 8~13 μm の赤外線として放出する現象です。この波長帯は大気にほとんど吸収されないため(「大気の窓」と呼ばれます)、熱は約 −270℃ の宇宙へ直接逃げていきます。放射冷却材料は日射の大部分も反射し、出ていく熱が入ってくる熱より多いため、昼間の日なたでも外気温より低くなり、しかも電気をまったく使いません。実測では金属屋根の表面が 20~35℃ 下がり、冬季の暖房電力の増加は 3.2% 以内にとどまります。
「晴れた夜は特に冷える」ことから考える
冬の雲ひとつない晴れた夜は、曇りの夜よりずっと冷え込み、明け方には芝生に霜が降ります。地面の熱は赤外線として上に放射されますが、曇りの日は雲に跳ね返され、晴れの日は雲がないので熱がそのまま大気を通り抜けて宇宙へ逃げるからです。この「放射で熱を逃がす」現象が放射冷却です。
地球の表面は約 25℃、宇宙空間は約 −270℃ で、巨大で無料の「放熱器」です。問題は、昼間は太陽の表面が約 5,500℃ で、降り注ぐ熱が逃げる熱よりはるかに多いため、ふつうの物体は日なたにあるほど熱くなることです。
昼間でも冷やせる鍵:反射+放射
放射冷却材料が昼間に外気温より低くなるには、2 つのことを同時に実現する必要があります:
- 日射を反射する→0.3~3 μm(可視光と近赤外線)をできるだけ反射し、熱を入れない
- 大気の窓で強く放射する→8~13 μm の放射率をほぼ 100% にし、熱を大気を通して宇宙へ逃がす

一般的な白い塗料は 1 つ目しかできないため、「熱を吸いにくい」だけです。放射冷却材料は特殊な光学構造で両方を同時に実現し、放熱が吸熱を上回ると表面が外気温より低くなります。市販品の例では、反射フィルムの日射反射率は約 83%、冷却塗料は約 86%、8~13 μm の放射率はいずれも 90% 以上です。
放射冷却と遮熱塗料・断熱材の違いは?
| 比較 | 遮熱塗料(遮熱) | 断熱材(断熱) | 放射冷却 |
|---|---|---|---|
| 原理 | 日射の一部を反射 | 熱伝導を遅らせる | 日射を反射+熱を宇宙へ放射 |
| 日射下の表面温度 | 外気温より高い | 外気温より高い | 外気温より低くなり得る |
| 熱がすでに入ってきたとき | 排出できない | 中にこもる | 外へ逃がし続ける |
| 消費電力 | 電力不要 | 電力不要 | 電力不要 |
東京で金属板を同時比較したところ、放射冷却フィルムを貼った表面は他社品より 5.9℃、放射冷却塗料は 3.7℃ 低くなりました(外気 17℃、メーカー実測)。
実際に何度下がり、どれだけ節電できるか?
| 現場 | 結果 |
|---|---|
| プレハブ(日本) | 屋根表面 61.2 → 36.3℃、室内空気 42.5 → 33.1℃ |
| 空港の搭乗橋(シンガポール) | 屋根表面 20~35℃ 低下、2 年連続で年平均 44% 節電 |
| 空港の連絡橋(日本) | 年間約 30% の節電と推定、年に約 10.9 万 kWh 削減 |
| 屋外変電設備・配電盤 | 表面は最大 15~30℃、盤内は最大 7~16℃ 低下 |
| 穀物倉庫(年中空調なし) | 庫内温度は最大 10.4℃、年平均 5℃ 低下 |
| 石油化学の貯油タンク(塗料) | 表面 25℃ 以上、油温 2℃ 低下 |
| ガラスドーム(透明窓用フィルム) | 平均放射温度 33.7 → 26.4℃、温熱的な不満 28% → 5% |
全データは「空港搭乗橋の事例」と「屋外配電盤の事例」をご覧ください。節電率は建物の条件と大きく関係し、屋根が外表面に占める割合が高く、日射が強いほど効果がはっきり出ます。
冬に寒くなり、暖房の電力が増えないか?
導入前に最もよく聞かれる質問です。答えはわずかに増えるが、幅はごく小さいです。メーカーが冬季に同じモデルハウス 2 棟で比較しました(室内暖房 21℃ 設定、外気 0~12℃):
| 日付 | 外気温 | 施工棟(kWh) | 比較棟(kWh) | 電力の増加 |
|---|---|---|---|---|
| 1/4 | 10~12℃ | 6.77 | 6.75 | 0.3% |
| 1/17 | 4~7℃ | 8.42 | 8.31 | 1.3% |
| 1/27 | 3~8℃ | 7.97 | 7.91 | 0.8% |
| 2/6 | 2~8℃ | 8.06 | 7.89 | 2.2% |
| 2/16 | 0~4℃ | 11.14 | 10.79 | 3.2% |
なぜ冬の影響は小さいのか?物体が放射する熱量は絶対温度の 4 乗に比例し(シュテファン=ボルツマンの法則)、冬は外気温が低いため冷却能力が自然と大きく弱まります。屋根に霜が付くとさらに弱まります。台湾の大部分の地域は冬が短く暖房需要も少ないため、夏に減る冷房電力は冬に増える暖房電力よりはるかに大きくなります。
向いている場所、効果が限られる場所は?
- 屋根一日中日が当たる金属屋根、鋼板屋根
- 電力設備屋外配電盤、変電設備、通信キャビネット
- 通路と小屋搭乗橋、連絡通路、コンテナハウス
- ガラス西日の当たるガラスカーテンウォールと天窓(透明窓用フィルム)
- 鋼構造タンクや鋼構造などフィルムを貼りにくい表面(塗料)
- 遮られている高い建物や庇に遮られ、空が見えない
- 断熱済み屋根の下にすでに厚い断熱層がある
- ほこり表面に長期間ほこりが積もり、清掃していない
- 寒冷地暖房が中心の地域
よくある質問
放射冷却とは?
放射冷却とは、熱を 8~13 μm の赤外線として放出する現象で、この波長帯は大気を通り抜けて宇宙へ直接逃げられます。放射冷却材料は日射の大部分も反射し、放熱が吸熱を上回るため、昼間の日なたでも外気温より低くなり、電気も使いません。
放射冷却・放射製冷・放射降温は同じものですか?
同じです。どれも同じ技術を指し、言葉が違うだけです。材料は放射冷却フィルム・放射冷却塗料などと呼ばれます。
冬に暖房の電力が増えませんか?
わずかに増えますが、ごく小さな幅です。メーカーの冬季の実測では、施工したモデルハウスの暖房電力は比較棟より 0.3%~3.2% 多いだけでした。冷却能力は温度の 4 乗に比例するため、外気温の低い冬は放熱能力が自然と弱まるからです。
曇りや夜でも効果はありますか?
晴れて空が見えるときに最も効果的です。曇りの日は日射も放熱も減るため効果は小さくなります。夜は日射がなくても表面は放熱を続け、温度は通常外気温より低くなります。
放射冷却で冷房を置き換えられますか?
多くの場合は完全には置き換えられませんが、冷房が処理する熱を大きく減らせます。ごく一部の条件では可能で、たとえば穀物倉庫では施工後に通年空調なしでも、庫内温度が比較倉庫より 10.4℃ 低くなりました。